
読書の質を高めたいなら「書評」に挑戦すべき理由『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』【書評】
2020/07/22「せっかく本を読んだのに、それで終わりになっている現状をなんとかしたい」と思っている人は、ぜひ読んでください。
本を読む目的は「読むこと」じゃないですよね?(基本的には)
自分のライフスタイルだったり、仕事だったり、健康だったり、何かしらの改善をするために、「この本に書かれていることを学びたい」と思って手にとったはず。
つまり「理解して、実践する」ことが大切だし、もともとの目的です。
今回紹介する『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』(倉下忠憲著:C&R研究所)は、上記の「理解して」の部分を特に強めてくれる本です。
その読書、「読むこと」がゴールになっていませんか?

読書の目的は、本の知識を得ることではありません(基本的には)。
単に情報が得たいなら、ネットで探してもそこそこ見つかるはずです。それでも「わざわざ本を読む」のはなぜか。
「身にしたいから」じゃない?
「博識であることの価値」はネット社会になって薄れてきていますが、「その情報を使いこなす人の価値」は高いまま、あるいは高まっているように思います。
であれば、せっかく「わざわざ本を読む」のであれば、知識を使いこなせるように、理解度を高め、身になる読書をすべきだし、実際私もそうしたいわけです。
「アウトプットすることは、読書の質を上げる」

このブログでも何度か書いていますが、アウトプットを意識すると、学びの理解度が高まります。
ソーシャルにアウトプットすることは、読書の質を上げる(中途半端な理解で、書きたくないという心理が、少なからず働く)。
理解する必要があるし、そうすることで著者の考え方を学ぶことができる。これこそがネット時代に本を読むことの意味でもあるわけです。
via 『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』(倉下忠憲著:C&R研究所) P.202
近しいことを、より科学的な見地から書いている本もあります。
ワシントン大学の実験によると、実際に人に教えたかどうかは重要ではなく「教えるつもりで読む」だけで記憶への定着率が28%上がることが判明しています。
via 『知識を操る超読書術』(DaiGo著:かんき出版) P.193
本を読むときは、実際にアウトプットするかどうかはともかく、アウトプットする前提で読むと、理解度や定着率が上がる、すなわち読書の質が高まります。
なので、原則アウトプットするつもりで読みましょう。
「あとで友人に聞かせよう」とか「ブログで紹介しよう」とか「YouTubeで紹介しよう」とか「Twitterでつぶやこう」とか「会社でLTしよう」とか、なんでもいいので、「アウトプットするとしたら」を意識しましょう。
読書ノート、書評の書き方

本書で紹介されている書評の書き方をカンタンに紹介します。詳しくはぜひ、ご自身で読んでみてください。
ポイントとしては、こんなところでしょうか。
- 書評に気負わない
- 身構えない
- 気に入ったところや、ちょっと意見のあるところをまとめた感想でいい
読書ノートは読書中に作らない
私は読んだあとに実際の行動を起こすために、読書ノートを書いています。といっても大した内容ではなく、ポイントやアクションプランをつらつら箇条書したようなメモです。
これがあると、自分の習慣への組み込みや、実際のタスクに落としやすく、また紹介するときのインデックスにもなります。
しかし、読書中に作るのはやめましょう。読書スピードが著しく低下します。作業の切り替えにより、集中力も低下します。やめましょう。
(例外もありますが、ここではいったん無視します)
マーキングインボックスを作ろう
なので、基本的には「読了後」にメモをまとめることになるのですが、読み終わってからまた最初に戻ってメモしたい場所を探し出すのは大変です。
そこで、読書中に気になったところがあれば、付箋を貼ったり、ペンで線を引いたりして、マーキングしておきましょう。これがマーキングインボックスです。
「インボックス」とは「収集箱」のことで、とりあえず放り込んでおく入れ物のような存在です。つまり、マーキングすることで、擬似的にインボックスに放り込んだ状態にしよう、というテクニックです。
これなら、あとからメモを作るときに、マーキングした場所を洗うだけでよくなります。
ペンを持って本を読もう(特に学術書など)
マーキングする際に「ペンで線を引く」と書きましたが、そうです。ペンをもって読書しましょう。気になるところに線を引き、思いついたアイデアをそのまま本にメモしてしまうんです。
私はこの本を初めて読んだときか、あるいは『レバレッジ・リーディング』(本田直之著:東洋経済新報社)を読んだあたりから、本を読むときにペンを持つようになりました。
本書の中でも言及されていますが、ペンを持つと読む姿勢が変わります。より前のめりに本と向き合うようになります。
言うなれば、受け身で授業を受けているときと、自分で机に向かって問題集に取り組んでいるときの「差」でしょうか。
「自分にとって大切な部分はどれか」ということをちゃんと意識しながら読むことができるので、圧倒的に読書の質が上がります。
抵抗がある場合はフセンやノートに
とは言っても本に書き込むことに抵抗がある人もいると思います。私も最初はそうだったので。
そういう方はフセンを使ったり、アイデアはノートにメモしたりしてもいいでしょう(スマホは誘惑が多く、集中状態に悪影響を与えるので、あまりおすすめはしません)。
私は昔から『ココフセン』というアイテムを使っています。本にフセンの束を貼り付けて、ティッシュのように一枚ずつ取り出せる、という代物です。素晴らしいアイテムなので、ぜひ一度、試してください。
マーキングとして使いやすいSサイズがオススメです。
また最近は紙の本は自宅かカフェ(つまりは落ち着いた場所)で読むようにしているので(インプット効率を上げるため)、アイデアは紙のノート『RHODIA』に書いたりしています。

そもそも私は読書をはじめる前に「読書の目的・得たいもの・理由」を書き出すようにしているのですが、それを『RHODIA』に書いてちぎって本のしおりにしています。
読み終わってから、日を開けてマーキングを見直す。
読書中に「重要だ」と感じても、読み終わってみると「そうでもない」ということはよくあります。日を置けばなおさらです。
読んでいる最中や読んだ直後は、あれもこれもそれもどれも重要に思えてしまうものです。
そのままマーキングをピックアップしてノートを作っても、ごちゃごちゃしてポイントのよくわからないメモができあがってしまいます。
なので、ノートは熱を冷ましてから作るようにしましょう。平日に読み終わったなら週末に。週末に読み終わったら、翌週末に。
レバレッジメモを作る
熱を冷ましたら、マーキングをピックアップした要約ノートを作りましょう。といっても、線を引いた部分をまとめただけのものでも十分です(いわゆるレバレッジ・メモ)。
それに本全体でなくても、自分にとって重要だった章だけでもOKです。重要じゃない部分をまとめる意味はありません。
ノートはカンタンに。A4一枚で。(詳細は書籍を見に行けばいい)
自分の理解度を確かめるには、本の内容をA4一枚でまとめなおすと良いでしょう。本当に理解できているのか問われますし、まとめる過程でも理解が深まります。まとめた内容は今後の復習にも使えますし。
要約は本当に要点だけをまとめたもので大丈夫です。詳細は本に載っているわけですから、わざわざ詳細を書き起こす必要はありません。
またどうせなら文章のまままとめるのではなく、図解するように心がけると良いでしょう。
以前に紹介した「視覚化読み」です。
このセクションでは「理解度や定着率を上げるにはストーリーが大事だ!」と書かれています。
たしかに、歴史の授業で年号と出来事をつらつら並べた授業より、いったい何があってなんでそんな事態になったのかをストーリー仕立てで教えてくれる授業のほうが理解しやすいし、記憶にも残るよね。
授業じゃなくてもマンガやドラマでもそう。年表を見るより、マンガで読んだほうが理解できるし、覚えられる。
これを行うことで、さらに理解度と定着率が上がります。
行動をタスク化する

ポイントの中には「今後、自分が起こすべき行動」もあったはず。そういった内容は、タスクとしてタスク管理ツールに登録しましょう。スケジュール設定までしてしまうのがオススメです。
私は『Todoist』を使っています。
また「行動に活かしたいけど、タスクとはちょっと違う」という『行動指針』や『ルール』のような内容もあります。
そういったルールを私は『Trello』にまとめています。ルールボードを作り、そこにジャンルごとのルールをまとめているわけです。
書評はマーキングインボックスや読書ノートを参考にまとめる
「書評」というと姿勢を正さなければならないように感じますが、ようは「本の紹介」を作るイメージです。ブログでもYouTubeでもTwitterでもAmazonレビューでも社内勉強会でも、プラットフォームは自分の好きな場所で良いでしょう。
ここまでくれば、作るのはカンタンです。レバレッジメモやノートを見れば重要なポイントがまとまっているので、それを紹介用の体裁に変換すればいいだけです。
もしくはテンプレートを作っておく
それでも「イマイチ形にできない」のであれば、テンプレートをもっておくと良いです。
例えば、
- この本を読んだ理由
- この本から得られるもの
- この本のポイント3つと私の考え
- これからの具体的な行動プラン
- まとめ
とか。
2つの注意点
さてここまでで書評・読書ノートを作るためのあれこれを書いてきましたが、注意点もあります。
熱を冷ましてから。

途中でも書いたように、読んでいる最中や読んだ直後は興奮していますし、本の書かれたあらゆる部分が重要に思えてきます。
しかし、すべてをノートにまとめたのでは意味がありません。だってそれなら本をそのまま使えばいいじゃん。
ノート作りは熱を冷まして、冷静になってから行いましょう。本当に自分にとって重要な部分だけをまとめれば、まとめるのも楽だし、振り返りやすいノートにもなります。
すべての本でやろうと思わない。

そしてこれも大切ですが、すべての本でやろうとは決して思わないことです。そんなのは大変すぎます。大変すぎるとどうなるか。本を読むのが億劫になります。
自分にとって重要ではない・なかった本であれば、その本に時間を割いても辛いだけです。そういうときはさっさと次の本に移ったり、本から学んだことを実践したりするほうが良いでしょう。
頑張りすぎない
完璧にやろうと思ってはいけません。上の理由と同じで、大変すぎるからです。
読書をするのは「理解して、実践するため」です。
繰り返しますが、目的はあくまで「理解して、実践する」ことです。決して「読書ノートを作る」ではありません。読書ノートはただの手段です。
つまり「理解して、実践する」ができているなら、それで良いんです。完璧な読書ノートを作る必要はありません。
目的と手段をちゃんと分けて考えましょう。
まとめ
- 読書の目的は「読むこと」じゃない
- アウトプットは読書の質(理解度や定着率)を上げる
- 読書ノート・書評を作ろう
- 読書中にポイントをマーキング(線引きやフセン)
- 読書後に、熱を冷ましてから、メモにまとめる
- 行動内容をタスク化したりルールブックにまとめる
- 書評を書く
今回、書いたことは本書で書かれていることのほんの一部です。
「なぜ本を読むのか」「ハイブリッドとはどういうことか」「なぜハイブリッドなのか」「自分にあう本の選び方」「Evernoteなどを活用した読書管理法」といった興味深いテーマも書かれています。
共感できる・勉強になる部分も多くて、まだまだ紹介したい・書きたいこともたくさんありますが、そうするとあまりに記事が長くなってしまうので、この記事で紹介するのはここまで。
気になる方は、ぜひ本書を手にとって読んでみてください。
編集後記

ということで、いまさらながら2013年に刊行された『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』を紹介しました。
この本を読んだのも、この記事の下書きを書いたのもかなり昔なんですが(6,7年前?)、「眠らせておくのは惜しい」と思ったので、仕上げて公開することにしました。(手元にあるのは初版だし、たぶん発売してすぐに読んでいるはず)
テクノロジー周りの話は若干古くなっているかと思いますが、そのへんは各々が良い具合に変換してくれればと思います。考え方自体は普遍的なものかと。
ためになれば幸い。